肺にあいた穴を手術せず治す薬!

肺にあいた穴を手術せず治す薬!

胸膜癒着療法剤『ユニタルクR 胸膜腔内注入用懸濁剤4g』『効能又は効果』の追加承認取得

[研究者] 国立病院機構名古屋医療センター / 坂 英雄

[更新日] 2023.08.02

肺に穴の空く病気である気胸とは

気胸とは、肺に穴があいて肺から空気が漏れ、タイヤのパンクのように肺がしぼむために、胸痛、咳や息切れなどが生じる病気です。

肺に穴が開く病気の原因には外部からの傷と突発的になるものがあります。女性よりも男性に起こりやすく、自然気胸は10代後半~20代前半で、身長が高く、やせ型に多いのが特徴で、再発が続く難治性の気胸は高齢者で喫煙をしている人に多く起こります。

一般的にはチューブを使った処置を行います。脇の下を切開し、さらに肺に穴を開け、チューブを挿入して空気を排出する処置になります。

再発し治らない患者さんも・・・

しかし治療をしても肺の悪い状態が続く限り、再発の可能性が高く、その場合は胸を開く手術をすることになります。

喫煙の影響などにより肺の病気を患っている高齢者の気胸も増えているため、早急に対処することが重要になります。

ユニタルクによる治療

欧米では、既にユニタルク(滅菌調整タルク製剤)が、胸膜癒着剤としてがんによる肺に水が溜まる病気の標準治療薬とされていました。

タルクには重い副作用がまれに発現することがあったのですが、近年、原因の一つとして粒子の大きさが考えられ、粒子径を調整することでリスクの少ないユニタルクの使用が推奨されました。

続発する気胸はチューブを挿入する処置だけでは治らないことがおおく、その場合は手術が必要になります。しかし、そのような患者さんは肺機能が悪かったり、高齢であったり手術が難しい方がいます。そのような場合に、ユニタルクが利用できるためよい治療の選択肢となります。

日本でもっとユニタルクを使えるように

タルクはもともと悪性胸水に対する治療薬として世界的に使用されていました。欧米では手術と同時に再発防止としても使われていました。

そんな中、ユニタルクが開発され国外ではいち早く製造販売されるようになりました。しかし、国内のデータは少なく検討段階だったため、使えるようにと動き始めました。

国立病院機構名古屋医療センターの坂英雄医師が中心となって計画した臨床試験に製薬会社から治療薬が提供され、臨床試験が進み、状態が悪く外科手術が困難な患者さんの気胸においてユニタルクが追加承認を得ることができました。

こうした医師たちの行動により、新しい治療の選択肢が広がっていくのです。

【研究成果】2017年から始まり2022年3月に承認
『ユニタルクR 胸膜腔内注入用懸濁剤4g』は「外科手術による治療が困難な続発性難治性気胸」の効能又は効果の追加承認を取得致しました 。

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